建築業界でのIT活用術
iPadを使って建築パースを現場に活かす「ひとり」工務店
iPadが世に出てから3年が経ちました。いまやタブレット型コンピュータは様々な業界に普及しています。 建築の世界でも、設計者から営業マンまで幅広く使われるようになってきましたが、「この人ほどiPadを活用している業界人はいないのではないか」と思えるほど、朝から晩までiPadを使いこなしている株式会社DSKの成田孝満さん。そんな成田さんの最新iPad活用術を紹介します。
現場に持っていくのはiPadだけ
埼玉県春日部市で新築、リフォームなどを手がける株式会社DSKの代表成田さんは、そのすべての仕事に3Dソフトで作成した建築パースを活用しています。
「建築パースはどんな提案でも必ず作るようにしています。お客様に完成イメージを確実に伝えられますし、下請けの仕事の時も建築パースで提案することで受注率・受注単価両方ともアップできますから」
成田さんは、作った建築パースや設計図面、詳細図など打ち合わせに必要なすべてのデータは、パソコンとスマートフォン、タブレット間で共有できるサービス「DropBox」を使って、iPhone、iPadでも見られるようにしています。
「以前は、現場には全部紙で持ち込んでいましたが、今は持っていくのはiPadだけです」現場ではDropBoxアプリを経由してiPadに取り込んだ設計図面や建築パースで施工状況を確認するほか、詳細図を見せながらの職人と打ち合わせにもiPadを使うそうです。
移動中でもiPad
「じゃあ、今から現場に出かけます」そういう成田さんに同行しました。 現場へは成田さんの営業用トラックに乗せていただきましたが、その運転席の様子にびっくり。ダッシュボード上にはスマートフォンやタブレット設置用のスタンドが林立しているのです。成田さんはさっきまで事務所で使っていたiPadやiPhoneをテキパキとスタンドに装着しながら、これらの使い方を説明してくれました。「このiPhoneは電話用、こっちはiPod touchで音楽再生用、真ん中のは普通のカーナビで、このiPadは拡大地図兼スケジュールチェック用にしています」
成田さんは現場へのルートをカーナビでセットしたあと、お気に入りのジャズをかけ、iPadにGoogle マップ(※)を表示させてからトラックを走らせました。
※iOS6版のiPad用Google マップはリリースされていないため、iPhone版を使っています。
「カーナビで基本的なルートは案内させるんですが、Google マップを立ち上げておけば、全体的なルートと詳細な周辺情報を同時に確認できるので便利ですよ。現場付近は道が入り組んでますからね」
しばらくトラックを走らせていたら、iPhoneから着信音が鳴り出しました。成田さんはおもむろに左耳のBluetoothヘッドセットを操作してからしゃべり出しました。現場へ客先へと飛び回っている成田さんは、どんな時でも電話に出れるようにと、外出時には常時このヘッドセットを耳に装着しています。
現場でもiPad
現場に到着した成田さんは、スタンドからiPadを取り外して建築中の住宅内に持ち込みました。 そこに待ちかまえていたのは大工の人見さん。成田さんは人見さんにiPadを見せながらさっそく打ち合わせを始めました。「こうやって建築パースを見てもらいながら、全体の仕上がりとか色合いとかを大工さんとイメージ共有するんです。完成したところをイメージしてもらうと施工がより確実になりますから」
建築現場での打ち合わせが終わった成田さんは、次の予定先であるお客様との打ち合わせに向かうべく、再びトラックを走らせます。その途中、再びiPhoneが鳴り出しました。「はい、え?見積もりですか、いますぐほしい?はい、了解です。じゃあすぐ送りますね」どうやら取引先から緊急の見積もり依頼のようです。
トラックを路肩に停めた成田さんは、iPadを取り出しました。画面にはなんとWindowsパソコンの画面。「これはSplashTop2というアプリです。今、ネット越しに事務所のパソコンと接続してるんです」SplashTop2は遠く離れた場所にあるパソコンをiPadで操作できるという優れものです。 成田さんは慣れた手つきでiPadを操ってMicrosoft Excelを起動させ、見積書を作成しメールで取引先に送信しました。
「外に出ていることが多いので、このトラックが第二のオフィスなんです。SplashTop2を使えば、今みたいに急な見積もり対応もできますし、Dropboxにない古いファイルもどこからでも呼び出せるんです」
iPadがあればそこがオフィスになる、そんな究極のモバイルワークを実践している成田さんです。
ページ公開日:2013年6月14日