建築パース プロへのインタビュー
建築パース業に携わる方に制作の極意、テクニックを聞く「建築パース プロへのインタビュー」。
第2回は、ハウスメーカーの建築パース作成業をされている有限会社寺岡建築設計事務所の寺岡千恵子さんに話を伺いました。
- プロフィール
- 有限会社寺岡建築設計事務所 寺岡千恵子さん
- 建築パース製作歴:25年
- 使用ソフトウェア:3DマイホームデザイナーPRO7、Adobe Photoshop
- ホームページ:有限会社寺岡建築設計事務所/作品集/ブログ
- まず寺岡さんの日々のお仕事について教えてください。
- 自社や提携しているハウスメーカーのお仕事で、建築パースの製作や3Dデータを使ったプレゼンテーションをしています。3Dでのプレゼンは、iPadを使って建て主の方に住空間や住宅完成後のイメージを確認していただいています。
- 建築パース作成のお仕事を始めたきっかけを教えてください。
- 航空会社のグランドホステスをしていましたが、インテリアコーディネートの仕事に憧れていたのと、自身のスキルアップのために、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミーに入学し、インテリアコーディネート、図面の読み方、描き方などを学びました。在学中に受講した建築パースの授業で建築パースに興味を持ち、本格的に学ぶために建築パースの専門学校に入学しました。そこで手描きパースの描き方、図面からパースを起こす手法を学びました。
- 専門学校に通う前から絵は描いていたのですか。
- 専門学校に通うまでは、絵はほとんど描いたことはありませんでした。建築の勉強もしていませんでしたので、何も知らない状態で学校に通い始めました。
- 専門学校卒業後は、どういう会社に就職されたのですか。
- 就職はせずに、専門学校の同級生3人と事務所を立ち上げ、鉛筆だけで描くスケッチパース作成の仕事を始めました。主にハウスメーカーの顧客向け建築パース作成を請け負っていました。当時はパソコンやメールはなかったので、図面をFAXで送ってもらい、その図面を元にスケッチパースを描き、完成した建築パースはFAXで納品していました。
- 専門学校で学んだ、図面からパースを起こす手法が活かされているのですね。
- そうなのですが、建築パースを描くために必要な最低限の知識しかありませんでしたから、はじめは失敗が多かったです。打合せの時、矩計図(かなばかりず)のことを「たんけいず」と平気で言う私を「本当にこの人大丈夫なんだろうか…?」と目を丸くして私を見ていた担当の方のことは今でも忘れられません。
- 卒業後すぐ独立されたのでしたら営業活動は大変だったのではないでしょうか。
- 事務所を立ち上げたすぐは、やはり仕事の依頼はありませんでしたので、知人を通して住宅メーカー1社と取り引きをはじめました。大手の住宅メーカーでしたので、たくさんある営業所へ紹介していただき少しづつ仕事が増えてきました。
- どのようなペースで建築パースを仕上げていたのですか。
- 繁忙期は、3~4枚/日、2~3時間/枚のペースで描いていました。速さと安さを評価していただけて、お陰様で忙しかったです。このときの仕事の経験で建築パースを手描きで早く描く技術を身につけることができて、今の仕事で役立てることができています。
- それでは、次に寺岡さんのお仕事について伺いたいと思います。
- どのような環境で仕事をされているのか教えてください。
- 3DCGパース作成用のソフトは、以前はCAD系のソフトを使っていましたが、現在はハウスメーカーの建築パースの製作がほとんどなので、住宅パース作成ソフトの3DマイホームデザイナーPROを使っています。添景の配置や建築パースの加工には、Adobe Photoshopを使っています。
- 現在のお仕事では、どのような建築パースを描いていますか。
- 主にハウスメーカー向けの営業販促用パース作成を行っています。描くパースは、手描きのパース、3DCGのパース、手描きのテイストを取り入れた3DCGパースなどさまざまです。
- 建築パースを描く手法はどのようにして決めているのですか。
- 基本的にはクライアントからの指示によって決まりますが、建築パースの種類によって描き方を変えています。外観パースは、施主の方がどのような家を建てるのかを検討するために使われるので、イメージが固定されないよう着色していない建築パースを手描きで描きます。インパクトを持たせるため、トレーシングペーパーに描いて青焼きしています。このパースだと成約率はほぼ100%なのだそうです!内観パースは、建てる家のデザインが決まってから描くので、具体的なプランを絵にします。 ですので、リアルな建築パースに仕上げるために3DCGのパースを描きます。
- なるほど、建築パースの使用目的に適した手法で描くのですね。他に建築パースを作成する際に心がけていることがありましたら、教えてください。
- ハウスメーカー向けの建築パースを描いているので、建築パースを見ていただく方は施主の方になります。どのような建物になるのか、暮らすとどのような生活習慣になるのかを施主の方に分かりやすく伝えて、建築パースでイメージしてもらうことが一番大切なことと考えています。ですので、綺麗に仕上げることよりも、施主の方の好みや要望を建築パースでどのように表現するかを意識して描くようにしています。
- 次に寺岡さんの建築パース作成に関するテクニックについて伺いたいと思います。
- お仕事では製作のスピードが大事だと思いますが、建築パースを早く描くポイントはありますでしょうか。
- 私は、独立したときの仕事で身につけたスケッチパース作成の経験が、建築パースを短時間で描くのに役立てることができています。ですので、時間があれば手描きでパースを描くといいと思います。建築パース作成をされる方でなくても、例えば営業マンが、サラっと鉛筆でパースを描きながら打合せをすると、営業の効果が大きいと思います。以前某ハウスメーカーの営業マン向けにスケッチパースの描き方を教えたことがあります。ご要望がありましたら、描き方教えますよ。
- 手描きで建築パースを描くことは、全ての基礎になっているのですね。それでは、建築パースを作成する際に参考にしている資料などはありますか。
- 洋風の建物を描くことが多いので、日本の書籍よりも海外の住宅プラン集をよく参考にしています。今は書籍よりも海外の建築写真集のiPad用アプリ(※)を見ることが多くなりました。海外の建築デザインは、インテリアパース作成のヒントになることが多く、とても役立っています。iPad用アプリですと、軽いのでいつでも気が向いたときに見ることができて便利ですね。
※建築写真集のiPad用アプリ「Garden & Landscape Design(ARAWELLA CORPORATION)」、「Dream Home(Apalon)」、「iHome HD(free)(iTongStudio)」
- iPadをお仕事に活用されているのですね。具体的にどのような使い方をされているのか教えて下さい。
- 今まで作成した3DCGパース、手描きパースすべてをiPadに入れておき、ハウスメーカーとの打ち合わせのときに、iPadに入れた作品を見ていただき、発注いただく建築パースのテイストを指定いただいています。iPadは紙よりも綺麗に作品を見せることができるのがいいですね。
- 最後に、これから建築パースの作成を始めようと思っている方にアドバイスをお願いします。
- 住宅パースについての話になりますが、綺麗な絵に仕上げることも大事ですが、作った建築パースは施主様、クライアント様に満足していただかないといけないので、建築パースの作成手法はその都度最適な方法を検討し、施主様、クライアント様に喜んでもらえる手法を考えて描くのがいいと思います。女性の方でしたら、結婚しても家でできる仕事なので、おすすめです!
- ありがとうございました。
ページ公開日:2011年10月5日