本サイトではより多くの方に快適に利用して頂ける様に、アクセシビリティ面を充分に考慮したコンテンツの提供を心がけております。その一環として、閲覧対象コンテンツの全てにスタイルシートを使用して制作しております。現在閲覧に使用されているブラウザには、当方制作のスタイルシートが適用されておりませんので表示結果が異なりますが、情報そのものをご利用するにあたっては問題はございません。

建築パース プロへのインタビュー


建築パース業に携わる方に制作の極意、テクニックを聞く「建築パース プロへのインタビュー」。
前職の住宅設計、営業マンの経験を活かして、住宅、店舗の建築パースから広告イラスト作成までおこなうNEGOROレンダリングの根来祐史さんに話を伺いました。

第4回 NEGOROレンダリング 根来祐史さん

プロフィール
NEGOROレンダリング チーフレンダラー 根来祐史さん
(JARA 日本アーキテクチュラル・レンダラーズ協会 会員)
  • 建築パース製作歴:25年
  • 使用ソフトウェア:3DマイホームデザイナーPRO、Adobe Photoshop
まず根来さんの日々のお仕事について教えてください。
分譲地の住宅や店舗の建築パース作成が主な仕事になります。建築パース以外では、広告チラシなどで使われる住宅の構造を説明するためのイラストや営業マンの似顔絵なども描きます。私の地元の大阪府岸和田市で行われるだんじり祭の献灯台のイラストや岸和田市の観光マップ(※)のイラストも描きました。また、モデルハウスで再生する分譲地の住宅完成イメージのウォークスルームービーも作成しました。

「コシノファミリーゆかり地マップ」「岸和田城下町周辺まち歩きマップ」(岸和田市観光振興協会公式サイト「岸ぶら」サイト)

建築パース作成のお仕事を始めたきっかけを教えてください。
高校生の時に演劇をしていて、主に舞台美術を担当していました。舞台はどんなに一所懸命作っても芝居が終わったら処分しないといけないんです。自分で取り壊していたのですが、それがたまらなく寂しくて、自分の手がけたものが残る仕事をしたいと思い、建築に関する仕事を目指すようになりました。高校卒業後は大阪芸術大学で建築を学びました。その頃は生活に密着した仕事をしたいと思っていて、卒業後はハウスメーカーに就職して、住宅設計の担当になりました。
建築パースのお仕事ではなかったのですね。
はじめは設計業務をしていたのですが、あるとき上司から「営業に向いてるからやってみろ」と言われ、営業職につきました。担当になったお客様から聞いた要望を打合せの場でスケッチして見てもらったら評判がよく、会社でも評価してもらえました。その後、営業マンがスケッチパースを描けるようにするため、会社が建築パーススクールの株式会社コラムデザインスクールにパース講習を依頼しました。そこで私は建築パースの描き方を学びました。それからは、担当のお客様向けに建築パースを描くようになりました。
営業担当のお客様向けに描いた建築パースが最初のパースなのですね。
そうしたら、その建築パースも評判が良くて、会社の先輩から建築パース作成を頼まれるようになり、自分の担当以外のお客様の建築パースも描くようになりました。その後、知り合いの不動産会社からの依頼で広告用の建築パースを描いたのですが、それがきっかけで会社を辞めて独立し、建築パース製作の仕事をはじめるようになりました。
独立後の営業活動はどのようにされていたのですか。
独立前に務めていたハウスメーカーからは継続的にお仕事をいただけていました。それ以外では、新聞の求人広告をチェックして、求人募集をしている設計事務所や工務店を見つけては、ポートフォリオを持って飛び込みで訪問してました。そこからもお仕事をいただくようになりました。
次に根来さんのお仕事の内容について伺います。
  • ↑ページTOPへ

NEGOROレンダリング 事務所内

NEGOROレンダリング 事務所内

現在のお仕事では、どのような建築パースを描かれているのですか。
分譲地の住宅完成イメージ図や店舗デザインの建築パースが多いですが、依頼のあった建築パースを描くだけではなくて、物件の魅力を伝えるのに必要なショットを自分で考えて必要な数だけの建築パースを描くんです。ですので、ひとつの仕事で20点ほど建築パースを描くのは珍しくありません。昨年は年間で約1,000点の建築パースを描きました。
すごい点数ですね!
例えば分譲地住宅の仕事では、広告用の建築パースを描くのですが、この土地は見晴らしがいいから景色がよく見える建築パースにしましょうとか、大きなバルコニーが特徴の建物であればビールを飲んでいたりバーベキューをしているシーンを入れた建築パースにしましょうとか、建物の魅力を伝える建築パースをクライアントに提案し、描いています。そうしていくと自然に描く建築パースの数は増えていくんです。

建築パースを描くというより、物件の営業をしているようですね。
前職での営業マンの経験を活かすことができています。
一昨年前に、売るのが非常に難しいと言われている分譲地の建築パース作成の仕事を行いました。その仕事では、クライアントである建設会社の営業担当の方と一緒に、売り方を検討するところから携わり、完全に営業マンの立場で、住宅のデザインをして、建築パースを描きました。結果、その分譲地は、売りに出した初日が大雨だったにも関わらず、その日の午前中に47棟すべてが完売するというありえない事態が起こり、クライアントと一緒に大喜びしました。

クライアントと一緒に喜びを分かち合えるのっていいお仕事ですね。
逆にまだ売れ残っている分譲地ですと、もうすぐ年末だからクリスマス・正月向けの広告を出しましょうと提案し、建築パースをリニューアルします。また、太子町(大阪府南河内郡)の住宅の広告では、建築パースに聖徳太子を登場させましょうなどと、真面目に提案をしています(笑)。

建設会社は膨大な金額で広告を出すわけですから、やはり反響の得られる建築パースというのを意識しています。広告の反響は、物件の売りだすタイミングや価格設定、立地など多くの条件があります。ですので、建築パースの占めるウエイトがどの程度かは分かりませんが、反響の少ない広告だった場合、自分の描いた建築パースがいけなかったのだろうか、建築パースの見せ方を変えたほうがよかったのだろうかということを考えていけば、先ほどの物件のように即日完売するようなことにつながるのかもしれません。
店舗施設関係の仕事では、どのようなことをされているのでしょうか。
九州のホテルの建築パース製作をおこなった時は、実際に建設予定地に出向きまして、クライアントからどのような施設の建設を考えているのかを説明していただきました。中庭を指さして「ここに身体障がい者向けの露天風呂を作りたい」という感じで。その日の夜も焼酎を飲みながら打合せは続き、○○を作りたい、△△がほしいという話を伺います。このような仕事には、図面は1枚もありません。建築パースを描くのに必要なら、現場に行きコンベックスで距離を測定したり、法務局で資料を入手したり、自分で測量したりします。建物のデザインも自分で行います。
建築パースを描くのに必要な情報は口頭で聞いた話だけなんですね。
そうなんです。私の場合はこのような仕事は多いんです。それで、伺った話や情報を整理して、建物のデザインを考え、建築パースに仕上げます。「こういう感じでしょうか」と見ていただき、「ああ、こうなるのか」とその建築パースではじめて施設の全貌が明らかになります。そして描いた建築パースの通りの施設が出来上がるんです。
このように建築パースは、クライアントが頭の中で考えていることを視覚的に表現する通訳のような使命もあるのだなと思っています。
とても重要な役割ですね。
そして、実際に完成したらこのホテルの露天風呂に入りに行くんです。自分の描いた建築パースの中にいるような体験を味わえることがなんとも言えない快感なんです。この楽しさは建築パースを描いた人にしか分からないでしょうね。
次に根来さんの建築パース作成に関する心構えについて伺いたいと思います。
  • ↑ページTOPへ
建築パースを描く上で心がけていることはなんでしょうか。
建築パースを描くときは、見る人が絵の中に入り込める、絵の中に参加できるように感じてもらえることを心がけています。この家に住んで家族で楽しくバーベキューをしたい、親子で楽しくバドミントンをしたい、じゃあ現地に行ってみようと思ってもらえ、見に来てもらえるのが理想です。バーチャルではありますが、建築パースは、夢を形にして、さらに見た人がその夢を膨らませることができるので、とてもやりがいを感じています。

また、自分で描いた建築パースは、広告などで使いやすいように、編集できる状態のデータで広告のデザイナーに提供します。手前の樹木や人物などの添景は位置を動かしたり、外したりできるようにレイヤーを分けていますし、空は外せるようにしています。建築パースを上手に活かされた広告であることが大切ですので、デザイナーが使いやすいようにこのようにしています。こういうチームワークはとても大事なことだと思います。
最後に、これから建築パースの作成を始めようと思っている方にアドバイスをお願いします。
まずあせらないこと。基礎的な力をじっくり時間をかけて身に付けておくと実際に仕事で建築パースを描くようになった時、大変効果的です。身に付けないでいると本当に苦労をします。学生の間は、基礎的な力、デッサン力や建築の知識を身に付けるといいです。普段の生活の中でスケッチを描くと、デッサンを生活の習慣にすることができて、デッサン力は飛躍的に向上します。デッサンは大変有効な技術です。打合せをしながらスケッチを描けるようになると営業成績がアップするかもしれませんよ。
ありがとうございました。(H.T.)

ページ公開日:2012年9月4日